【本>小説】猫も杓子も 田辺聖子 伊丹市立図書館にゆかりあり
高度経済成長期の前半?ざっくばらんな大阪の都会の若者生活がいとおしい小説「猫も杓子も」のお話です。
昭和一ケタ生まれ田辺聖子さんの小説
NHKテレビ小説(朝ドラ)「芋たこなんきん」の原作者としても有名。「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)」で芥川賞を取り、「ジョゼと虎と魚たち」は映画化されています。
1928(昭和3)年大阪市に生まれ、2019年の91歳までご存命でした。
「猫も杓子も」は芸術やメディアの華やかな世界で働く女性の物語。心情の描写がとても詳しいので自伝的小説かと思いましたが、違うようです。
主人公は人生の美食家と言ってるけどそれではダメなのよ、とご本人は語っています。(「一生、女の子」より)
その辺りのいきさつはエッセイ「一生、女の子」に書いてありました。
昭和真っ只中の大阪
おそらく昭和40年代前後が舞台でしょうか? 祖母の若い頃の大阪を覗き見たような世界です。
言葉の書き方がとても秀逸。
祖母が使っていた言い回しのまんまで感動すら覚えるほどでした。
私のまわりでは他にいなかったから、祖母はおもしろくてしゃれっ気のある言葉遣いをする人だと思っていました。
だけどあの世代の人はみんなそうやってしゃべっていたのか!
とても賑やかで、飾らなくて、風通しの良い面白い世の中だったのだろうと思い、少しうらやましくなります。
気になる主人公のその後
主人公の阿佐子がなんかすごい性格でいろんな男性とどっちつかずで交流していくのですが、この先阿佐子どうなるの?ってとても気になる終わり方でした。
田辺聖子さんの他の小説にチラッと後年の阿佐子が出てくるらしいです。
でも、他の主人公の話に登場する阿佐子ってただの変人で終わりそう。
阿佐子の頭の中の、自分本位な望みや、のんきな考えや、急にブルーになるところをまた垣間見たい。
こちらの解説文にめちゃくちゃ共感し、なるほど!と思いました。特に、「大阪という都市生活でつちかった市民性で、魅力的に人物を表現する」という部分が、すごくしっくりきます。
日本SFの巨人が語る「同世代の女の子文学」としての田辺聖子はこんなにもみずみずしい!『大阪八景』 小松 左京
小松左京さんは日本沈没などの作者です。
伊丹市立図書館
田辺聖子さんは晩年、伊丹市に住んでいたそうで伊丹市立図書館”ことば蔵”の名誉館長であり広大な著書コーナーがあります。
阪神間の住民は7市町村で図書館を利用できるのでとても便利です。なかでもこの”ことば蔵”は雰囲気、蔵書数、内部の広さも十分で快適。
伊丹市は20冊を3週間借りられますし、イオンモール伊丹昆陽にも分室があるので、他の市と比べてとても良いです。
最寄りのJR伊丹駅から徒歩11分。伊丹駅には「イオンモール伊丹」が隣接しておりとても便利です。