【本>歴史】世界史としての日本史 2016年 半藤一利、出口治明
日本は特別な国、日本は素晴らしいという論調があるけれど、ちょっと落ち着いて世界の中の日本を見直そう。
半藤一利氏と出口治明氏の対談本「世界史としての日本史」のお話です。
戦争や現代日本の問題などを扱いながらも柔和な口調でお互いの見識を共有していくので安心して読み進められます。
- 日本史、世界史に興味がある人
- 政治や国際関係に興味がある人
- 日本は世界の中でどのような国なのか考えてみたい人
- 歴史の堅苦しい本は読みたくない人
1つでも当てはまっていればOKです!
半藤一利 昭和史研究者の代表格、2021年に最後の新刊
1930(昭和5)年、東京生まれ。東京大学文学部卒業。文藝春秋に入社し、「週刊文春」「文藝春秋」編集長、専務取締役などを経て作家に。「歴史探偵」を名乗る。著書に『ノモンハンの夏』『昭和史』『日露戦争史』シリーズなど多数。
2021年1月逝去。新刊は直前までまえがき・あとがきを執筆した『歴史探偵 忘れ残りの記』が2021年2月19日に出版されています。
優しい笑顔の通り、対談でも年下の出口さんに偉そうぶることなく楽しそうに語っています。
奥さんは、夏目漱石の孫、末利子氏。『夏目家の糠みそ』『漱石夫人は占い好き』を出版している随筆家です。
半藤さんはオリンピックにあと一歩で出られるところだったという経歴も持っています。戦中、学生は何を見て考えていたか、戦後のやんちゃでたくましい生活や文藝春秋で取材をした話など、宮部みゆき氏との対談「昭和史の10大事件」で下町ふうにチャキチャキ語られています。
出口治明 民間出身ながら世界史に造詣が深い
1948(昭和23)年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業後、日本生命に入社。ライフネット生命保険代表取締役会長兼CEO。著書は『「全世界史」講義』Ⅰ、Ⅱ『生命保険入門 新版』『直球勝負の会社』など多数ある。
2018年1月に立命館アジア太平洋大学学長に就任されています。
この方も優しい笑顔で、半藤さんへの尊敬を片時も緩めないけれども、自分の見識をまっすぐに述べるという芸当をやってのけられています。
新刊は『教養としての「地政学」入門』『自分の頭で考える日本の論点』など活発に執筆活動をされていて、書店でどれか1タイトルは平積みになっていると思います。
世界史としての日本史
”「文字が出現してからの人間の歴史は地球大の5千年史ひとつであって日本史はない」と考えるようになった”
他に、ペリーの来航・開国は中国市場でイギリスに勝ちたいというアメリカの思惑があり、太平洋航路の途中の日本を押さえたかった。
飛鳥・奈良時代の日本に女帝が多かったのは、中国でも女帝が多かった時期で影響を受けているだけではないか。
出口さんのまえがきから目からウロコで説得力のある持論が展開され引き込まれていきます。
”自国は特別である、特殊であるという意識は、実は東アジアの各国に特徴的な現象でその底流にあるのが「中華思想」だ” ”ミニ中華思想が生まれるのです” ”京都のことを洛陽と呼んだりします” ”「自分の国が一番だ。お前らは野蛮だ」とそれぞれが唱え始めるのです”
”なぜ交易に行くのかと言ったら、その国にしかない珍しいものが欲しいからです” ”中国のお茶、絹、陶磁器のような特産品が日本にはなかったおかげで、長い間侵略を受けずにすんできた”
続いて、明治維新、第一次・第二次世界大戦、戦後、現代の日本、中東についても深く話し合いをされています。
自分が教養が足りないことがよくわかりましたが、この対談でさえ頭をぱんぱんに使っている自分にとって、お二人が進める参考文献にはなかなか到達できそうにありません。でも柔らかい物ばかり食べて弱っていた歯で硬い物を噛むように、この本にはしんどいけど鍛えられていると感じました。
半藤さんのあとがきで、”戦前・戦中で勉強をできてない自分の物知らずを痛感させられました”といたく謙遜されています。ヘビーな内容ながら、最後まで優しいお二人の対談の締めくくりにほっこりとさせられました。
学校の勉強でもそうですが、知識を得るときに誰から、どの先生から聞くかというのは本当に重要なことですね。
まとめ
- 「世界史としての日本史」は、戦争や現代日本の問題を扱いながらも柔和な口調で議論が展開されている
- 対談では日本史を世界史の一部と位置づけ、文字が出現してからの人間の歴史が地球大の5千年史であり、日本史はその一部であると考える
- 日本史は特殊性を持ちながらも、その特殊性は東アジアの各国に特有のものであり、中華思想の影響を受けていると考えられる
- 日本が長い間侵略を受けずに済んできた要因は、中国のお茶、絹、陶磁器などの特産品が日本にはなかったからとも考えられる
- 太平洋航路の途中の日本を押さえることで、アメリカは中国市場での地位を確立しようとしていた
- 半藤一利氏は昭和史研究者で著書には『ノモンハンの夏』や『昭和史』があり、優しい笑顔と偉そうぶらない対話スタイルが特徴的
- 出口治明氏は民間出身ながら世界史に造詣が深く、著書には『「全世界史」講義』や『自分の頭で考える日本の論点』などがある
よろしければ読んでみてください!
最後までお読みいただきありがとうございました。